フィールド日記

2012.03.31

齧歯類調査報告  アカネズミの生息を確認

  2012.03.31 Saturday

  齧歯類調査のための仕掛けを確認したところ、栗畑の縁に仕掛けたケースにアカネズミが入っていました。オスのアカネズミで、体長は21㎝、体重は39.8gでした。齧歯類調査のベテランである浜田俊先生に計測をしていただいたあとは、また野に放しました。
アカネズミは森にすむネズミで、ドングリを分散貯蔵することで知られています。貯蔵したまま放置されたドングリはやがて芽を出し育っていきます。ある調査ではアカネズミが木の実を100m以上移動させたという記録も残っています。不二聖心の森の中にもアカネズミによって運ばれた種やドングリから芽生えた樹木がきっとあるはずです。

 
 

                今日のことば

そうだ僕は僕だけで出来てるわけじゃない
100年1000年前の遺伝子に
誉めてもらえるように いまを生きてる
この生命で いまを生きてる
今日も生きてく

                      福山雅治

2012.03.31

ハナニラ  キスジコヤガの幼虫  齧歯類調査

  2012.03.30 Friday

 ハナニラが学院のあちらこちらで見られるようになりした。ほとんどがかつて植えられたものが野生化したもので、繁殖力の旺盛さにおいて際立つ花です。


 写真の中央に移っている棒のようなものは、キスジコヤガという蛾の幼虫です。地衣類を身にまとうことによって、自分が目立たないように工夫しています。まるで地衣類と同化しているようですが、下の写真を見ると確かに移動していることがわかります。


 富士山周辺の哺乳類調査を続けていらっしゃる浜田俊先生に不二聖心にも調査のための仕掛けを設置していただきました。明日の朝、7時に仕掛けの中を確認します。不二聖心の齧歯類の生物相が明かされようとしています。

 

                今日のことば

 達人は少ない。詩人も少ない。われわれ凡人はどうしても現実にとらわれ過ぎる傾向がある。そして現実のように豹変し、現実のように複雑になり、現実のように不安になる。そして現実の背後に、より広大な真実の世界が横たわっていることに気づかないのである。

                                湯川秀樹

2012.03.29

今日の富士山  アズマキシダグモ  クヌギカメムシの孵化

  2012.03.29 Thursday

 今日の富士山の写真です。真冬の富士山とは違って山肌に白以外の部分が増えてきたように思います。

 


 アズマキシダグモの写真を撮りました。このクモの生態は非常にユニークで、求愛の時にオスがメスに獲物を糸で包んだプレゼントを渡したり、メスが卵のうを口にくわえて運んだりします。

 


 2月7日のフィールド日記で紹介したクヌギカメムシの卵が孵化しました。背中にはもうすでに立派に模様が入っています。一度見つかると次々に目に入るもので、このカメムシの卵を何十箇所にもわたって確認しました。

 


  今日のことば

  真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし。

                              田中正造

2012.03.28

クサボケ  トビハムシ

  2012.03.28 Wednesday

 草木瓜(くさぼけ)の蕾を見つけました。木瓜を見ると漱石の『草枕』の一節を思い出します。それは次のような一節です。

木瓜は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲がった事がない。(中略)評して見ると木瓜は花のうちで、愚かにして悟ったものであろう。世間には拙を守ると云う人がある。この人が来世に生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい。

 「拙を守る」とは「要領が悪く世渡り下手な生き方を貫く」という意味です。文学の力とは不思議なもので、上の一節を読んでいると、自分の「拙」を受け入れて生きていこうという気持ちになります。

  

クサボケの葉の上にトビハムシの仲間を見つけました。他のクサボケにも同じトビハムシがいました。これはクサボケにつくトビハムシだなと思って歩いていくと、今度はキジムシロの上に同じ甲虫を見つけました。はじめは、「クサボケにつくトビハムシのはずなのにおかしいぞ」と思いましたが、よく考えてみたら、クサボケもキジムシロもバラ科の植物でした。トビハムシがクサボケとキジムシロは同じグループに属する植物であることを改めて思い出させてくれました。

 

                今日のことば

地球とそこに存在する生命を扱う私たちのすべてを特徴づけている一つの資質があります。
私たちはけっして退屈しないことです。私たちは退屈するはずはありません。研究すべき新しいことがつねに存在します。一つの神秘を解明すると、私たちはさらにより大きな神秘の入り口に連れていかれます。
                            レイチェル・カーソン

2012.03.27

キブシ  マムシグサ

  2012.03.27 Tuesday

 以前、不二聖心にいらした英語の先生で、キブシの花穂が伸びてくると本格的な春の訪れが近いことを感じるとおっしゃっていた方がいらっしゃいました。何と心豊かな春の過ごし方かと思います。

 

マムシグサの芽生えを初めてしっかりと見ることができました。一年でこれほど姿を変える植物も珍しいと思います。そのことをお伝えするために「不二の自然78」で紹介したマムシグサの記事も載せておきましょう。


 
(お墓の近くの道)

マムシグサ
科名 サトイモ科テンナンショウ属 
学名 Arisaema serratum (Thunb.) Schott


マムシグサは性転換する植物として知られています。十分な栄養を吸収して株が大きくなると雄花は雌花に変わり、実をつけるための準備をします。栄養が不足して株が小さくなると、雌花は雄花に変化して結実することを避け栄養を根に送ります。不二聖心では今の季節になるとあちこちで、この雌花の実を見ることができます。
写真の赤い実の輝きは、この株が生育環境に恵まれ十分な栄養を吸収できたことの証でもあるのです。

                        (平成22年11月30日)

 

              今日のことば

 誰々よりできたできない、そんなことが気になるのは、教師にも子どもにも、余裕というか隙間のようなものがあるからだと気づいたのです。一生懸命自分の学習に打ち込んでいれば、そんな隙間は生まれてきません。優劣など頭に浮かぶひまのない世界にまで、教師は子どもを連れて行かなくてはいけないのだと思いました。

                                 大村はま

2012.03.26

ミツバアケビ ヤマアカガエルの卵  タゴガエルの卵の記事が新聞に掲載

  2012.03.26 Monday

 3月9日のフィールド日記でも紹介した、校舎の裏のミツバアケビがもう花芽をつけていました。アケビの仲間がなぜかアジアと南米のチリのあたりに分布しているという話を以前に書きました。同じ祖先から分化したものと考えられます。この小さな花芽に地球の歴史の謎を解く鍵が隠されているのかもしれません。

 

図書館の花壇の中にある、オオカナダモを栽培している池にヤマアカガエルが卵を産みました。水中に沈んでいる卵の様子が池の表面からもかすかにわかります。

 

 

 フィールド日記で何度か紹介してきたタゴガエルの卵についての記事が岳麓新聞に載りました。先週もタゴガエルは岩穴の奥で元気に鳴いていました。
ヤマアカガエルもタゴガエルもたいへん貴重な両生類で、不二の自然の宝と言えます。
 

 


今日のことば

 さあ、切符をしっかり持っておいで。お前はもう夢の鉄道の中でなしに本当の世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐに歩いていかなければならない。天の川のなかでたつたひとつのほんたうのその切符を決しておまへはなくしてはいけない。

                      『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)より

2012.03.25

ミツマタ オニシバリ ヒシベニボタル アクニオイタケ ソトカバナミシャク

  2012.03.25 Sunday

第一牧草地から第二牧草地へ向かう道の途中でミツマタの花が盛りを迎えています。芳香があたりに漂い春を迎えた喜びを感じさせてくれます。


 

 ミツマタと同じジンチョウゲ科のオニシバリの写真を林道で撮りました。こちらもとてもいい香りがします。繊維の強さと並んで芳香もまたジンチョウゲ科の植物の大きな特徴と言えるでしょう。


ヒシベニボタルを倒木の上に見つけました。ヒシベニボタルの近くにはアクニオイタケがたくさん生えていて、かなり腐朽の進んでいる木であることがわかります。ヒシベニボタルの幼虫の生態はまだよくわからないことが多いようですが、住処となる倒木の腐り具合も順調な生育のために不可欠な条件なのだと思います。


 
 

 3月13日に職員室の前で見つけた蛾の種名が判明しました。ソトカバナミシャク(Eupithecia signigera)でした。不二聖心初記録です。

 

             今日のことば

 『絵のある自伝』は、86歳になった安野光雅さんの生涯を綴った自伝です。素晴らしいのは、自慢話や手柄話が一つもないこと。周囲にいた温かい人や切ない人たちが愛情たっぷりに生き生きと童話のように描かれています。たとえば、小学校で隣の席だったつえ子さん。
よく笑うけれど、家庭が貧しいため、お弁当を持って来られない日は独り、運動場で過ごす。
そんなつえ子さんを安野少年は、おどけて笑わせます。このエピソードだけで、安野さんのやさしさが伝わってきます。                                

                                阿川佐和子

2012.03.24

シュンラン  ツチイナゴ

  2012.03.24 Saturday

 シュンランの写真を撮りました。花はすでにしおれてしまっています。平本政隆教諭によると3月20日には開花していたということです。シュンランは6つの県で絶滅危惧種か準絶滅危惧種に指定されています。

(上の文章について、平本政隆教諭より指摘があり、写真のランはコクランであることがわかりました。平本教諭によって確認されたシュンランはすでに花が折れてしまったそうです。他にシュンランの開花は見られず、狂い咲きであった可能性が高いとのことでした。
訂正させていただきます。)


 
 

 越冬したツチイナゴと出会いました。ツチイナゴは成虫で越冬することのできる日本で唯一のバッタですが、寒さが厳しいと死んでしまうこともあります。この冬は多くのツチイナゴが越冬に失敗したのではないかと推測します。


 


今日のことば

何か良い物語があって、
それを語る相手がいる。
それだけで人生は
捨てたもんじゃない。

             『海の上のピアニスト』より

2012.03.24

クロヤマアリの営巣  エゾハサミムシ

  2012.03.23 Friday

 昨日までの暖かさとはうって変わり、今日は雨の一日となり、少々肌寒さを感じました。
三寒四温とはよく言ったものです。「三寒」の日はあるものの、確実に春らしさは増してきています。昨日はツクシを見つけたことをフィールド日記で紹介しましたが、もう一つ発見がありました。ツクシと同じように、これもまた遅れ気味であったクロヤマアリの営巣をすすき野原で確認できたのです。
1枚目の写真にうつっている道の上に何年も続けてクロヤマアリが巣をつくっています。
今年もその子孫が活動を始めました。2枚目の写真がクロヤマアリとその巣の写真です。

 

  東名高速の下のトンネルの落ち葉の中にハサミムシを見つけました。見慣れないハサミムシでしたので専門家の方にたずねたところ、エゾハサミムシ Eparchus yezoensis(Matsumura et Shiraki, 1905) メス (クギヌキハサミムシ科  Forficulidae)であることがわかりした。どうもこの種は今の時期から落ち葉の中に潜むようで、越冬は別の場所でしているらしいこともわかりました。「落ち葉をめくってエゾハサミムシがいたら春」、そんなユニークな春の見つけ方もできるのかもしれません。


 

 

            今日のことば

   どうして、この社会は、小さな声を聞かないんだろう。

                             落合恵子

2012.03.22

ツクシとスギナ

  2012.03.22 

 駐車場から続く道の脇に毎年3月になるとツクシが顔を出す場所があります。しかし、今年はなかなかその姿を確認することができませんでした。ようやく今日、ツクシがたくさん生えているのを確認できました。2枚目の写真には、ツクシ(胞子茎)と同じ地下茎から生える栄養茎であるスギナも写っています。3枚目はスギナだけを写してみたものです。シダらしくないシダ植物ですが、ツクシは立派なシダの仲間です。



今日のことば

あなたの道を主にゆだねよ
主に信頼せよ
主が成し遂げてくださる
                 詩編37篇

2012.03.22

春のきのこを食べるヤマナメクジ

  2012.03.21 Wednesday

 春のきのこを食べているヤマナメクジを見つけました。ヤマナメクジは人家の周辺ではあまり見られないナメクジです。人家の周辺で最もよく見られるのはチャコウラナメクジと言い、日本生態学会によって、「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。ナメクジの世界でも外来種問題は深刻であり、不二聖心で純国産のヤマメクジに出会うと少しほっとします。


 

      今日のことば

リングでも人生でも
ダウンすることはなんら問題ではない。
ダウンしたままでいることが問題なのだ。   

                       モハメド・アリ

2012.03.19

タマキクラゲ

  2012.03.19 Monday

春の雨が降った日の次の日は雑木林に行く楽しみが一つ増えます。雨をたっぷり吸ったクヌギの枝々に発生したタマキクラゲが朝日に輝くのを眺めることができるからです。今日はまさにそのような日でした。立っている木だけではありません。昨年の台風で倒れた木にもたくさんのタマキクラゲがついていました。いつの年も変わることのない不二聖心の春の風景です。

              今日のことば

どんなに医学が発達しても、生と死は単なる「問題」ではなく「神秘」であり、その前で
必要なのは、素直な驚き、謙遜、畏敬、開かれた心です。

                           アルフォンス・デーケン

2012.03.18

ウスベニスジナミシャク

  2012.03.18 Sunday

 中学校校舎の壁に擬態するようにはりついていた蛾の写真を2月27日に撮りましたが、その種名がウスベニスジナミシャク(Esakiopteryx volitans(Bulter,1878))であることがわかりました。早春に姿を現す蛾です。『日本産蛾類標準図鑑』には、ウスベニスジナミシャクの生態について次のような説明が載っています。

 全国的に丘陵部から山地まで広く分布し、各地で多産する。年1化、関東地方周辺の低山地では3月下旬から出現し、1000m以上の山地では4月下旬から5月中旬まで見られる。

 不二聖心で2月の下旬に見られたのは、異例のことなのかもしれません。
不二聖心初記録です。

 

今日のことば 

浅き川も深く渡れ。

                  星野道夫

2012.03.17

オオイヌノフグリ

  2012.03.17 Saturday

 裏の駐車場の縁にたくさんのオオイヌノフグリが咲いています。オオイヌノフグリの学名は、Veronica persicaと言いますが、Veronicaは聖書に登場するヴェロニカという女性の名前からとられています。その由来について述べた稲垣栄洋さんの文章を次に引用します。
春を彩る可憐な花と聖書の登場人物との思わぬつながりに目を向けてみてください。

 オオイヌノフグリの学名は「ベロニカ」という。重い十字架を背負って刑場に向かうキリストの顔の汗を拭いてあげた女性のハンカチに、キリストの顔が浮かび上がるという奇跡が起きた。この女性の名がベロニカである。オオイヌノフグリの美しい花をよく見ると、花のなかにキリストらしい人の顔が浮かび上がっている。これがベロニカと呼ばれるゆえんである。
なんと高貴な名なのだろう。
花に浮かび上がったこのキリストの顔は、実はハチやアブを呼び寄せるための模様である。
四枚の花びらには中央へ向かって蜜のありかを示すガイドラインが引かれている。まさに迷えるハチたちを導いているのである。

                    『身近な雑草のゆかいな生き方』より

          


今日のことば

何もかも失った人に
みんなから見捨てられた人に
あなたの痛みにつながりたいと
そっと差し出す一本の手を贈ろう
その手を握ってくれた
あなたそのものが
わたしへの最高の贈りものだから
その瞳の奥で
目には見えないはずの贈りものさえ
一瞬ゆらめくから
                    晴佐久昌英

2012.03.16

キジムシロの奇形

  2012.03.16  Friday

今年もキジムシロの写真を撮りました。バラ科キジムシロ属の植物のほとんどは花弁が5枚です。キジムシロも例外ではありません。ところが昨年の3月に撮影した2枚目の写真の場合、花弁が6枚になっています。これはキジムシロの奇形ですが、もしこの株から出ている花がすべて花弁6枚ということになると、キジムシロの変種ということになります。
この1週間、駐車場の奥の雑木林では、次々にキジムシロが咲き始めました。この春もキジムシロの変種を探してみようと思います。


 

                   

今日のことば

  成功した人びとは、失敗した人びとがやりたがらないことをやる。
                              E・М・グレイ

2012.03.15

ヒメリュウキンカ

  2012.03.15 Thursday 

 春になると不二聖心の正門はヒメリュウキンカの花に彩られます。そこにはホソヒラタアブなどの虫もやってきて多くの命が活発に動き始めたことを感じさせます。以前、札幌聖心女子学院のシスターからエゾノリュウキンカの絵葉書をいただいたことがありました。今ごろ札幌もリュウキンカの花で彩られているのでしょうか。いつか姉妹校の校内の植物を比較してみるのも面白いかもしれません。

              


今日のことば

空のようにきれいになれるものなら
花のようにしずかになれるものなら
価値なきものとして
これも捨てようあれも捨てよう   

                          八木重吉

2012.03.14

馬酔木

  2012.03.14 Wednesday 

 職員室の横の庭で、馬酔木の花がしばらく前から咲き始めています。これは園芸種の馬酔木で、こちらの方が毎年早く花をつけます。これは不二聖心に限ったことではなく、裾野市より標高の高い御殿場のような地域でも園芸種の馬酔木は既に開花しています。
馬酔木は万葉の時代から日本で見られた植物ですが、なぜこの花を食べると馬が酔うのかという点について、『折節の花』(栗田子郎)という本に前川文夫の興味深い説が紹介されています。その説によると、4世紀に東北アジアから日本列島にもたらされた馬は大陸にはアセビが分布しないためにその有毒性を知らず、これを食べてしまった馬が中毒症状を起こしたのだろうということです。
馬が日本にいなかった時代から馬酔木は日本の春を彩り続けてきたということです。

              


今日のことば

   学んだことのたった一つの証は、変わることである。   林竹二

2012.03.13

ヒメクモバチの巣

  2012.03.13 Tuesday 

 すすき野原の木の根につくられたヒメクモバチの巣を見つけました。すでにハチは巣立ったあとでしたが、巣の中には、ハチの親が子に与えたクモの死骸が残っていました。親は子にクモを与える時、脚をすべてとってしまいます。脚をとると血が流れますが、ハチが傷口をなめると血は止まるそうです。ハチの唾液に止血作用があるというのです。驚異の世界としか言いようがありません。

 

 


今日のことば


 きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。

須賀敦子

2012.03.12

ジャゴケの雌器托  ノミハニワゴケの蒴

  2012.03.12 Monday 

 今朝は7時35分にキツツキのドラミングの音を確認しました。リズミカルな音が春の空に響き渡り、それに呼応するかのようにシジュウカラが鳴き交わしていました。春の朝の平和なひとときでした。
講堂の裏に生えているジャゴケの雌器托が柄を伸ばしていました。ジャゴケの雌器托は早春に柄を伸ばすことで知られています。
裏の駐車場で見つけたノミハニワゴケにも蒴がしっかりとついていました。これも早春の風景です。2月25日のフィールド日記で紹介したノミハニワゴケと比較するとその成長ぶりがわかります。
コケたちもまた静かに春を告げています。

 

              今日のことば

 ひとりでいられるという能力は、愛する能力を持つことへの条件である。

                           エーリッヒ・フロム

2012.03.11

河津桜 メジロ

  2012.03.11 Sunday 

 東日本大震災から一年の今日、新聞各紙はさまざまな震災関連の記事を載せていました。
その中で朝日新聞の天声人語が心に残りました。その後半を引用してみましょう。

 被災地ばかりでなく日本全体にとって、「3・11以前」はもはや戻れぬ対岸になってしまった。振り向けば橋は消えて、隔てる川の流れは深い。だれもが心細い肩を寄せ合いながら、「絆」という焚火に心の手をかざしてきた1年だったように思う。
その「絆」の文字も過剰な使用に摩耗気味だ。井上ひさしさんが健在なら「つるつる言葉」と呼ぶかもしれない。便利に使われすぎて意味も実体もすり減ってしまう言葉を、そう称していた。
スローガンで何が片づくわけでもない。だが私たちの社会がこれほど他者を思ったのも、史上まれなことではなかったか。ともに悲しみ、「絆」の一語に魂を入れ直す日としたい。

 同じ朝日新聞の書評欄では、震災を論じる言葉の貧困の問題が取り上げられていました。
この1年は、私たちの語る「ことば」が改めて問われた1年であったように思います。

 さて、不二聖心は、校内のあちらこちらで春の花々を楽しめる季節を迎えています。プールの近くの河津桜も徐々に花が開き今は三分咲き程度になっています。河津桜は、1955年に静岡県賀茂郡河津町田中で飯田勝美氏が偶然発見した原木がその後、新種であると認められ、河津桜と命名されたものです。不二聖心でも毎年、美しい花を咲かせ春の訪れを告げています。今日はメジロが来て花の蜜を吸っていました。3枚目の写真には、小さくですが、目の回りが白いメジロの姿が写っています。


 

今日のことば


そうだ うれしいんだ
いきる よろこび
たとえ むねのきずがいたんでも

なんのために うまれて
なにをして いきるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
いまをいきる ことで
あつい こころ もえる
だから きみは いくんだ
ほほえんで
そうだ うれしいんだ
いきる よろこび
たとえ むねのきずがいたんでも

                      やなせたかし

2012.03.10

ネコノメソウ

 2012.03.10 Saturday 

 朝のNHKのニュースでクチバシカジカの話題をとりあげていました。南三陸町に生息するクチバシカジカは震災以後、全く見られなくなっていましたが、先日ようやくその姿が確認され、復興のシンボルとされるようになったということでした。生き物の健気に生きる姿は不思議と人に生きる力を与えます。
今朝は東京で雪が降り、裾野市も冷たい雨の朝となりましたが、その中でもタゴガエルの声は崖の穴の奥からはっきりと聞こえてきていました。穴の近くにはたくさんのネコノメソウが生えています。ネコノメソウは希少種で県によっては絶滅危惧種に指定しています。
貴重な動物の周囲には貴重な植物もまた多いということなのでしょう。

 

今日のことば

 作家にはトリックも仕掛けも必要ではない。それどころか、作家になるには、とびっきり頭の切れる人間である必要もないのだ。たとえそれが阿呆のように見えるとしても、作家というものはときにはぼうっと立ちすくんで何かにーーそれは夕日かもしれないし、古靴かもしれないーー見とれることができるようでなくてはならないのだ。頭を空っぽにして、純粋な驚きに打たれて。
 

                             レイモンド・カーヴァー 

2012.03.09

ミツバアケビ

  2012.03.09 Friday 

 ミツバアケビの冬芽が、日々少しずつ姿を変えています。上の写真は冬芽の今の姿、下の写真は2月20日に撮影したものです。ミツバアケビは、春たけなわになると、濃い紫色のユニークな形の花を咲かせます。

 アケビ科の植物については、前川文夫博士が実に興味深いことを『植物の進化を探る』
(岩波新書)の中に書いています。以下に引用してみましょう。

 

 アケビ科は日本からヒマラヤ、さらに南にかけてかなりの種類があります。それからひどくはなれて南米チリの南部の辺にほんの少し二属二種が分布しています。この分布はこれまた不思議な分布です。なぜ太平洋の全く反対側に生えているのかという疑問を禁じえません。
前回の調査の折に、中部チリの山の中でこれに出会いました。まさにミツバアケビとムベのちょうど合の子のような形の葉が付いていて、それまで一度も生品はもちろん、標本さえ見たことがなかったのに一目見てすぐわかりました。ということは東アジアのアケビ科との間に非常に血が濃いということを膚で感じとったからでしょう。それがこんなふうに飛び離れて分布しているのは、やはりこれはかつて古い赤道にずっと沿って分布していたのだけれども、赤道の移動に伴ってだんだん条件が悪くなり、多くのところでは絶滅してしまい、結局ヒマラヤ、日本、南アジアの一地域とチリの局所とにだけ残されたのであるとみるよりほかには理解ができないのです

この文章は、アケビ科の植物が大陸移動の生き証人であることを伝えています。一つの植物をじっくり見つめることは、時として地球の歴史に思いを馳せることにもつながるのです。

 


今日のことば


この一日一日を
大切に過ごしなさい
人生とは
この一日のことです
いのち、とは
この一日のことです
今まで沢山あるし
これからも沢山ある
と思って
何も考えず
ただ漫然と
同じことを繰り返しては
いけません

                 葉祥明

2012.03.08

タチツボスミレ

 2012.03.08 Thursday 

 裏の駐車場から奥へと続く道では春の草花をたくさん目にすることができます。今朝は、今年初めてタチツボスミレの開花を確認しました。春になってこの花を目にすると、決まって夏目漱石の「菫ほどな小さき人に生まれたし」という句を思い出します。司馬遼太郎は「漱石の人と生涯と作品が、この一句でわかるような気がする」という意味の文章を書き残しました。
漱石はなぜ「小さき人に生まれたし」と思ったのか。司馬遼太郎はこの句のどこに漱石という人間の全体を見たのか。長い時間をかけて考え続けていく価値のある問いだと思います。

 

今日のことば

 あなたの心のなかの未解決のものすべてに対して、忍耐強くなってください。たとえば錠のおりた部屋のように、あるいは外国語で書かれた書物のように、問いそのものを愛するように努めるのです。いますぐ答えを探さないでください。あなたはまだ答えをみずから生きていないのですから、いま、答えを与えられることはありません。すべてを経験することが大切なのです。今は、問いを生きる必要があります。そうすればいつの日か、徐々に、知らず知らず、答えを経験している自分に気づくことでしょう。
                           ライナー・マリア・リルケ

2012.03.07

ウグイス ホソヒラタアブ フキノトウ フクロウ

  2012.03.07 Wednesday 

 朝、今年はじめてウグイスの声を聞きました。今年は例年に比べてずいぶん遅いように感じます。
啓蟄を過ぎて季節は一気に進みました。裏の駐車場のツバキの花には3種の双翅目の昆虫が訪花していました。下の写真はそのうちの1種、ホソヒラタアブです。ツバキのすぐ近くに生えているフキノトウも少し見ない間に、成長がずいぶん進んでいました。
夜、帰る時にはフクロウが鳴いていました。真っ暗な森から聞こえてくる低音のフクロウの声は実に神秘的でした。


 
 


今日のことば

自信があると、何でも自分でできるから、一人で抱え込む司祭になってしまう。大事なのは、「人の心が分かる」こと。だから、自分の無力さを感じている司祭の方がいい。

                               荻喜代治神父

2012.03.06

タマヤドリコバチ

  2012.03.06 Tuesday 

 昨日は啓蟄でしたが、それを待っていたかのようにクヌギエダイガフシからさまざまなハチが羽化し始めました。クヌギエダイガフシという虫こぶを形成するのはクヌギエダイガタマバチですから、それ以外のハチはみなタマバチに寄生しているということになります。下の写真のハチはタマヤドリコバチで、写真は大きく拡大されていますが、実際の体長は3ミリほどです。金属光沢の美しいハチですが、肉眼ではその美しさに気づくことはまずありません。3ミリのタマヤドリコバチがクヌギエダイガタマバチに寄生する瞬間も肉眼で確認することは不可能でしょう。私たちの回りには、気付くことのできない命のつながりが無数に存在しているのだろうと思います。

 


                                 今日のことば

学校の成績とか、会社の成績が一位だったってェやつに人の心がわかるもんか。大部分の
人間は一位じゃねェんだもの

                           『無名人名語録』より

2012.03.05

アオゾメタケ

2012.03.05 Monday

 キノコの絵を書いてごらんと言われたら、多くの人は傘の部分を茶色にするのではないでしょうか。
写真のキノコはそのような一般的なキノコのイメー ジとはかけ離れているキノコです。アオゾメタケという
名前からもわかるように、成長すると青色を帯びてくるキノコなのです。裏道で見かけました。

今日のことば

その思想がたとえ高潔なものであっても、人間の最終目標は思想ではなく行動である。

The end of man is an action and not a thought, though it were the noblest.

                    トマス・カーライル

2012.03.04

タゴガエルの卵塊

2012.03.04 Sunday

 驚くべき発見をしました。タゴガエルのひそむ崖の近くの地面にタゴガエルの卵塊がいくつも落ちていたのです。先日の大雨の際に崖の中の穴から溢れ 出たものと推測されます。流れ出た卵塊は、ゼリー状の物質により、木の枝や落ち葉にしっかり付着していました。思わぬ発見によりタゴガエルの産卵が既に行 われていたことを確認できたわけです。
改めて地層を見てみたところ、礫を含む地層と富士山の火山灰が降り積もった地層が重なっている様子が確認できました。富士山の火山活動によって作られた 地形がタゴガエルに生息場所を提供しているのです。
富士山と関わりの深い希少生物であるタゴガエルは、不二聖心の宝と言ってもいいでしょう。

今日のことば

魂に光をそそいでくれることばは、どんな宝石より貴重である。

The words that enlighten the soul are more precious than jewels.

                  ハズラト・イナーヤト・ハーン

2012.03.03

タゴガエル サワガニ ニホンヒメフナムシ

2012.03.03 Saturday

 崖の中で鳴く幻のカエル、タゴガエルの生息調査を続けています。今日は、昨日生息を確認した穴に複数の個体がいることを鳴き声から確認しました。さらに この穴の近くの別の壁からたくさんの声が聞こえてくるのも確認し、録音することができました。タゴガエルは砂岩層と泥岩層の間にできた空間に生息すること が多いという調査結果があります。
もしかしたら、裏道の壁の地層もタゴガエルの生息状況と関係があるのかもしれません。
 タゴガエルの調査にあたり、専門家のアドバイスを受けたところ、タゴガエルのいる場所の近くにはサワガニがいることが多いというご教示を受けました。今 日は、タゴガエルのひそむ穴のすぐ下にサワガニの死骸を見つけました。甲羅の中にはニホンヒメフナムシが潜んでいました。
近くの壁にはサワガニの巣も確認 できました。

                  今日のことば

英知とはつぎになにをするかを知っていること、技術はそれをどうやるかを知っていること、
徳はそれをおこなうことである。
                        デイヴィッド・スター・ジョーダン

Wisdom is knowing what to do next, skill is knowing how to do it, and virtue is doing it.

2012.03.02

タゴガエル

2012.03.02

 裏道でキチャワンタケの発生の有無を確認していたら、崖の中からカエルの声が聞こえてきました。
「幻のカエル」と呼ばれるタゴガエルの声です。 「グオッ、グオッ」という、くぐもったような独特の声が穴の奥から聞こえてきます。どうやら穴の奥に水がしみ出ていて、そこでタゴガエルが生活しているら しいのです。この声は毎年、同じ穴から聞こえてきます。
タゴガエルは天敵の少ない今の時期に産卵をするのですが、その時期だけ鳴き声を聞くことができるのです。
声は聞こえても姿を見ることはできないので、穴の写真だけ撮っておきました。
日本各地で絶滅危惧種に指定されている貴重なカエルが不二聖心の一角でひそかに生き続けています。
このカエルについて詳しく知りたいという人には、『幻のカエル ――がけに卵をうむタゴガエル――』
(大木淳一 新日本出版社)という名著をお薦めします。

 

   今日のことば

雨のおとがきこえる
雨が降っていたのだ
あの音のようにそっと
世のためにはたらいてゐよう

             八木重吉

2012.03.01

ツバキキンカクチャワンタケ

2012.03.01  Thursday

今日から3月に入りました。
寄宿と本館の間の中庭で、理科の平本政隆教諭がツバキキンカクチャワンタケの発生を確認しました。
ツバキキンカクチャワンタケはツバキにだけ発生するキ ノコです。昼休みには平本教諭の説明に楽しそうに耳を傾ける中学3年生の姿も見られました。自然界の不思議に目を向ける生徒がこのような観察を通して一人でも多く育っていくことを願っています。
キノコの愛好家の中には今の時期に発生するツバキキンカクチャワンタケを「春キノコのアイドル」と呼ぶ人もいます。

                   今日のことば

あなたがこの世の偉大なものとともに、ささやかなものにも歓びを見出すことをわたしは願っています。
一輪の花、ひとふしの歌、あなたの手のひらにとまる蝶にも。

                               エレン・ラヴァイン

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