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フィールド日記

2014.05.23

道路を横断するモリアオガエル

 掃除の時間にカエルの声が聞こえてきました。生徒にモリアオガエルの声だと話すと、生徒は希少種の声が身近に聞こえることに驚いていました。
 帰り道では、車の前をカエルが横切りました。これもまた絶滅危惧種のモリアオガエルでした。樹上生活をするために発達した吸盤が道路の横断には少し邪魔そうでした。


今日のことば

人間たちはいま急速に退化の道を歩んでいる。なぜなのだろう。その原因をつくっているのは、急ぎすぎる社会だ。現代は経済でも政治でも、そればかりか自分の人生さえ短期間に結果を出そうとする。そのことが人間たちから長期的な思考、根本から時間をかけて解決していこうという思考を失わせる。どこに根本的な問題があるのかに気づかない人間たちをつくりだしてしまうのである。
                                         内山節
             

 

 

2014.05.18

クロオオアリの結婚飛行

5月16日の夕方に「夏休み子供自然体験教室」の散策コースの下見をしました。その時驚くべき光景に出会いました。クロオオアリの結婚飛行を目にしたのです。結婚飛行のために生まれてきたオスたちが何十匹と巣の周りに集まり、次々に飛び立っていきました。近くには飛び立つ準備をしている女王アリもいました。今の時期の午後の時間帯だけに見られる貴重な光景でした。


こちらが女王アリです。


今日のことば

僕ら人間の分際で、この難しい人生に向かって、答えを出すこと、解決を与えることはおそらくできない。ただ、正しく訊くことはできる。本当にうまく質問することができたら、もう答えは要らないのですよ。
                                       小林秀雄

2014.05.15

マイマイカブリ

 同僚の先生から「珍しい虫がいます」と教えていただき、確認したところマイマイカブリでした。全国で希少種になりつつある甲虫です。カタツムリを食べる虫として知られるマイマイカブリは、カタツムリをより食べやすくするために、胸の部分を細長い首のように進化させました。これだけの形になるには気の遠くなるような時間がかかっているものと思われます。マイマイカブリはオサムシの仲間です。漫画家の手塚治虫が「オサム」というペンネームをつけたのは、マイマイカブリが大好きだったからと言われています。

今日のことば
岩田久二雄氏は昆虫採集のだいご味について、昆虫を見ていると「天地悠久という感じがする」と語る。又、自然の回復力というもののしたたかさを昆虫の内に見るともいうが、冒頭の章にある「夏には過去を、冬は未来を物語る」とみる地史的スケールをもった雄大な自然観は、小さな虫の中に宇宙が集約されていることを、岩田氏が鋭敏なセンスで明確に受けとめているからにちがいない。
                          『自然観察者の手記』の解説(藤原英司)より

2014.05.14

キツネアザミ

「共生の森」でキツネアザミが咲き始めました。「アザミによく似ているが実はアザミではない。狐にだまされたようだ」ということで、キツネアザミと名付けられました。

『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』という本の中で、哲学者の内山節が1965年頃からキツネにだまされたという話を聞かなくなったと書いています。キツネにまつわる、「人をだます動物」というイメージは薄れつつあるように思います。キツネアザミの名前の由来の説明には詳しい注釈が必要かもしれません。

 今日のことば 

自然を守る運動は、初めはその破壊に対する告発から始まり、次に自然を守るための規制を要求するようになる。だがその地点でとどまっていることも、また許されない。なぜなら自然を破壊するものは、具体的契機としては、開発や自然の改造であるとしても、その基礎には、私たちの近代から現代にかけての歴史と、その精神がよこたわっているからである。 だから私は人間の理性の力で森を守ろうとすることにも躊躇する。今日の人間の理性とは、現代社会の精神と分かちがたいものでしかない。
 恐らく森は、人間たちの営みの確かさをとおしてしか守れないであろう。森とともに暮らす人々の営み、そしてそんな人々を支えていく私たちの営み。そのさまざまな営みが、永遠に循環し続けるように展開していく森の時空とともにあるとき、森は永遠である。

 

                                  内山節

 

今日のことば

 

自然を守る運動は、初めはその破壊に対する告発から始まり、次に自然を守るための規制を要求するようになる。だがその地点でとどまっていることも、また許されない。なぜなら自然を破壊するものは、具体的契機としては、開発や自然の改造であるとしても、その基礎には、私たちの近代から現代にかけての歴史と、その精神がよこたわっているからである。

だから私は人間の理性の力で森を守ろうとすることにも躊躇する。今日の人間の理性とは、現代社会の精神と分かちがたいものでしかない。

恐らく森は、人間たちの営みの確かさをとおしてしか守れないであろう。森とともに暮らす人々の営み、そしてそんな人々を支えていく私たちの営み。そのさまざまな営みが、永遠に循環し続けるように展開していく森の時空とともにあるとき、森は永遠である。

 

                                  内山節

2014.05.09

卒業生の声とモリアオガエルの声

 久し振りに不二聖心を訪れた卒業生が、教室から聞いたカエルの声が懐かしいと話してくれました。教室から聞こえたということは、おそらくそのカエルは希少種のモリアオガエルだと思います。モリアオガエルは樹上生活をするカエルで、木の枝に卵を産み付けることで知られています。
産卵の時期はまだ先ですが、5月3日にはその姿を池で確認することができました。

今日のことば

夏よ夏よ鳳仙花散らし走りゆく人力車夫にしばしかがやけ    北原白秋

2014.05.06

ハルジオンとヤブキリの幼虫

 共生の森は今の時期、ハルジオンで覆われています。不二聖心の広いフィールドの中でも独特の風景です。切り開いた土地にいち早く進出する性質をハルジオンが持っていることが改めてわかりました。花の上にはヤブキリの幼虫が乗っていました。ハルジオンを中心に独特の生態系が形作られています。


今日のことば

桜が陽の中で散ってゆくさまを見ますと、花びらの一枚ずつが最後には光になってしまうようで、ああいう花はほかにあるでしょうか。
安田章生

2014.05.03

八十八夜の翌日の茶畑とキンラン

 昨日が八十八夜でした。お茶畑の若葉は摘まれるのを待ちかねているように勢いよく茂っています。

お茶畑の肥料とするために不二聖心の雑木林は毎年、きれいに草刈りがなされます。そのおかげで稀少な植物が雑木林の林床に数多く残っています。今日はキンランの写真を撮ることができました。


今日のことば

詩を書きはじめたころ「さびしさを大切になさい」とある詩人にいわれたことがあります。「大切に」とはどういう意味なのか、私ははっきりつかむことが出来ませんでしたが、いま、その意味がわかったように思います。それは、さびしさを知る心を出発点にして、何かを創りだしてゆくことなのでしょう。
高田敏子

2014.05.01

森のネズミと出会う

 今日はオリエンテーリング大会でした。

生徒全員が元気に競技を終えたあとで、ポストの撤収をしました。森の中でようやく見つけたポストを持って林道に出たとき、足元にネズミがいるのを見つけました。たとえようもないネズミの愛らしい表情に思わず見入ってしましてました。




今日のことば

みんな僕が虫自体に関心を持っていると思っているけど、そうではありません。虫ってものずこく背景があって、その背景を一言で「自然」もしくは「生態系」と言い換えてもいいけれども、そういうものの一種の象徴として、虫を見ているんですね。                                    養老孟司

2014.04.26

キジとキンラン

久しぶりにキジと出会うことができました。餌となる小動物の動きが活発になったためにキジも採餌に忙しい様子でした。


キジのすぐ近くの雑木林で、開花直前のキンランの写真を撮りました。今年もゴールデンウィークの頃には美しい花を咲かせてくれそうです。
キンランは菌根菌とクヌギとの三者の共生関係で知られ、全国各地で絶滅危惧種に指定されています。


今日のことば

植物にせよ、小鳥にせよ、又昆虫にせよ、私は其の姿を見て其の名を口にし、其の名によって其の姿を思い出せるようになりたい。それは彼等と一層親密な関係に入りたいが為である。(中略)無知は無縁の兄弟である。愛する事によって一層よく理解し、理解する事によって一層深く愛する事を学ぶのは、幸福の最も静かな又最も純なるものではあるまいか。 

                                        尾崎喜八

2014.04.25

アミガサタケ

今年も中学校舎の中庭で春を告げるキノコ、アミガサタケが発生しはじめました。例年より数が多いような印象を受けます。今年はもしかしたらキノコの当たり年かもしれません。どんなキノコに今年は出会えるのか。今から楽しみです。


今日のことば

いま曲がり角にきたのよ。曲がり角をまがったさきになにがあるのかは、わ 
からないの。でも、きっといちばんよいものにちがいないと思うの。
                           『赤毛のアン』より