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フィールド日記

2018.07.06

ハナイカダ

 校舎の裏の斜面にあるハナイカダの果実が紫黒色に熟していました。葉の中央に花をつけるというユニークな特徴をもっています。ハナイカダという和名は、この特徴を筏(いかだ)に乗る人の姿に見立てたことが由来になっています。

 ふつう、植物の芽は茎の先端か、「葉腋(ようえき)」と呼ばれる葉の付け根にできます。花芽も茎の先端か葉腋にできるのがふつうなので、葉の中央に花が咲いていると違和感を覚えます。しかし、上の写真をよく見ると、葉の付け根から果実までの葉脈が太くなっていることに気が付きます。ハナイカダは、葉腋から伸びた花の軸と葉脈が癒合した結果、葉の中央から花が咲いていると理解されています。

2018.07.03

タシロラン

 校内でタシロランの開花を確認しました。全体が白いのは葉緑体を持たないためです。タシロランは養分のすべてを光合成ではなく土壌中の菌類から得ています。

 1970年代までは大変珍しいランでしたが、最近では分布域を広げつつあるようです。常緑広葉樹林内に生えるということで、そのような環境が増えているのかもしれません。とはいえ、現在も環境省によって準絶滅危惧種に指定されており、環境の変化によって絶滅の危機に瀕する可能性があります。不二聖心ではこの季節になると注意して観察していますが、見られる年と見られない年があります。今年はこの1株しか確認できていません。今後も観察を続けたいと思います。

2018.07.02

6月の野鳥の調査

 日本野鳥の会東富士副代表の滝道雄先生が6月の不二聖心の野鳥について調査をしてくださいました。調査の報告書が届きましたので、掲載いたします。

 6月度の調査で確認された野鳥は下記の通りです。
 1.ヤマガラ      6羽
 2.ウグイス      9羽
 3.ヒヨドリ      28羽
 4.ハシボソガラス   6羽
 5.キジバト      2羽
 6.カワラヒワ     3羽
 7.メジロ       3羽
 8.シジュウカラ    5羽
 9.ハシブトガラス   30羽
10.コゲラ       3羽
11.ホオジロ      3羽
12.ホトトギス     3羽
13.ツバメ       6羽
14.オオルリ      2羽
15.アマツバメ     2羽
16.スズメ       4羽
17.アオゲラ      1羽
18.キビタキ      5羽
19.センダイムシクイ  1羽
20.キセキレイ     4羽
21.サンショウクイ   2羽
22.エナガ       10羽
23.アオサギ      1羽
24.サンコウチョウ   2羽
25.ムクドリ      1羽
26.コサメビタキ    3羽
27.コジュケイ     2羽
28.ガビチョウ     6羽
【特記事項】
1.サンショウクイのペアが共生の森近くの駐車場で見られた。オスがメスに餌をプレゼントする、求愛給餌行動が見られた。
2.エナガ、ヤマガラ、メジロの親子が混群を作っていた。
3.サンコウチョウが第二オークヒル隣の第14留の所と、距離の離れたヒノキの人工林で確認できたので、学院内には2個体が生息している。また、6月22日に確認したので繁殖をしている可能性が高い。
4.センダイムシクイを初めて確認した。学院での確認種は60種類になった。
5.コサメビタキを3個体確認した。

2018.06.29

キクグンバイ

  ススキ野原でグンバイムシの一種を見つけました。形が相撲の行司がもつ軍配うちわに似ていることが名前の由来です。わずか2~3mmほどの大きさですが、繊細な網目模様の羽を持っており、英語ではこれをレース編みに見立ててlace bugと呼ばれているようです。

 グンバイムシは針状の口で植物の汁を吸って生きています。上の写真はピントが合っていなくてわかりづらいですが、グンバイムシの後方の部分は吸汁されて白くなってしまった細胞で、前方の黒い部分は排泄物だと思われます。

 下の写真のように横から見ると、立体的で複雑なつくりを持っていることがわかります。本種は野菊から吸汁していて、頭頂部にとげ状の突起があることからキクグンバイだと思います。

2018.06.26

ナワシロイチゴとアオガネヒメサルハムシ

 ススキ野原にナワシロイチゴが咲いていました。「苗代(なわしろ)」とは稲の苗を育てる場所のことです。苗代で稲の苗を育てる時期に赤い果実ができることからナワシロイチゴと呼ばれたそうです。しかし、現在の稲作ではすでに田植えも済んでいるのでずいぶんと時期がずれてしまっています。ピンク色の花弁は直立し、雄しべや雌しべを包むように咲きます。

 葉は食べられたような痕だらけで、よく観察すると下の写真のような2mm前後の小さなハムシがたくさんついていました。アオガネヒメサルハムシだと思います。しかし、観察したときには葉ではなく花に集まっていたので、花粉を食べている可能性もあります。体中に花粉をつけて動き回っているので、受粉の手助けになっていそうです。ナワシロイチゴは多少食べられてしまう代わりに、アオガネヒメサルハムシに受粉を手伝ってもらっているのかもしれません。

2018.06.22

ヘリグロテントウノミハムシ

 校内に植えられたキンモクセイにヘリグロテントウノミハムシが見られます。キンモクセイなどの葉を食べる3~4mmの小さなハムシです。しかし、名前の通り一見すると小型のテントウムシのように見えます。

 生物が何か別のものに姿などを似せることを「擬態(ぎたい)」と言います。テントウムシの仲間は体に苦い毒を持っており、鳥などはこれを嫌ってテントウムシを食べないと言われています。ヘリグロテントウノミハムシはテントウムシに擬態することで、鳥などの天敵から身を守っているのだと考えられます。
 実際にヘリグロテントウノミハムシにそっくりなテントウムシがいます。それが下の写真のヒメアカホシテントウです。大きさや黒地に赤い点が2つある模様など非常によく似ていますが、こちらは正真正銘のテントウムシの仲間です。この個体はお茶畑にあるヤブガラシにとまっていました。

 ちなみに、人間にとってヘリグロテントウノミハムシはキンモクセイなどの葉を食べてしまう害虫ですが、ヒメアカホシテントウは害虫であるカイガラムシ類を食べてくれる益虫です。一番の見分けるポイントは触覚で、ヘリグロテントウノミハムシはヒメアカホシテントウに比べ長い触覚を持っています。

2018.06.19

サビマルクチゾウムシ

 前回紹介したサルナシを観察しているときに、枝にとまっているサビマルクチゾウムシを見つけました。体は名前の通りサビを思わせる赤茶色の毛におおわれています。

 ゾウムシの仲間は象の鼻を思わせる長い「口吻(こうふん)」を持つことで他の甲虫と区別できます。口吻はほとんど目立たない短いものから極端に長いものまで、種によって多様性があります。サビマルクチゾウムシの口吻は丸くふくらんだユニークな形をしています。長い口吻はおもに産卵のために植物に穴を開ける道具として使われるそうですが、サビマルクチゾウムシの丸くふくらんだ口吻にはどのような意味があるのでしょうか。

2018.06.15

サルナシ

 学院の森にサルナシが生育している場所があります。先日、様子を見に行ったのですが、すでに花の時期は終わっており、果実ができつつありました。マタタビ科のつる性の落葉樹で、葉の柄の部分が赤くなるという特徴があります。


 2~3cmになる果実は秋に熟し、甘く食用になります。キウイフルーツと近縁で、味や果肉の見た目はキウイフルーツに似ています。近年は、ベビーキウイなどの名称でスーパーの果物コーナーに海外産のサルナシが売られていることもあります。秋になったら再びこの場所を訪れて、不二聖心産のサルナシを味わってみたいと思います。

2018.06.12

エビガライチゴ

 2週間ほど前から共生の森でエビガライチゴが咲いています。植物体に長い赤色の腺毛が密生しており、白い花弁は直立して雄しべや雌しべを包むように咲くのが特徴です。中部日本の代表的なキイチゴ類の一種で赤く熟した果実は食用になります。


 がくは花が咲き終わるといったん閉じ、実が熟すころに再び開きます。写真に見られる先端の方のものはつぼみではなく、咲き終わった後の花で、中にはまだ熟していない青い果実が見られます。腺毛からはネバネバする液体が分泌されており、小さい虫は絡まって動けなくなっているようです。エビガライチゴの長い腺毛と開閉するがくは果実が成熟するまで虫からの食害を防ぐ働きがあるのかもしれません。

2018.06.08

ドウガネツヤハムシ

 共生の森のタラノキにドウガネツヤハムシが見られました。ハムシは食草や食樹が限られていることが多く、本種はタラノキの葉を食べるとされています。3mmほどの小さなハムシですが、名前の通り強い光沢があります。

 ドウガネツヤハムシはユニークな産卵を行うことでも知られています。卵は糸で植物体に吊るされ、さらに糞でコーティングされます。おそらく天敵から卵を守るための行動だと思いますが、これには何と数十分もの時間を要するそうです。実際にタラノキの葉をめくって確認をすると、下の写真のような卵がいくつも確認できました。