フィールド日記
2011.05.02
ヒゲナガルリマルノミハムシとゼンマイハバチ
平成23年5月2日 月曜日
不二聖心の森は若葉の季節を迎えています。
植物の生命力あふれる若葉の季節ですが、実はこの季節は植物にとって受難の季節でもあります。柔らかい若葉を好んで食べる生き物が自然界にはたくさんいる からです。たとえば甲虫目の中には、「葉を食べる虫」ハムシが約780種、日本だけで存在し、その多くは若葉の季節に現れます。下の写真はその一例で、ヒ ゲナガルリマルノミハムシです。オオバコの葉を好んで食べます。雑木林で見つけました。
もちろん若葉を食べるのは、甲虫だけではありません。下の写真はゼンマイの若葉ですが、食痕が はっきりと
見てとれます。食べたのはゼンマイハバチの幼虫で姿は見えませんが葉の裏に潜んでいます。
ゼンマイハバチはゼンマイの若葉をすべて食べつくしま す。そうするとハバチの幼虫に襲われたゼンマイは、
もう一度、一から成長を始めます。ところが若葉を茂らせる時期になると、親になったハバチがまた卵を産み
付け、若葉は再び食い尽くされてしまいます。最初にゼンマイハバチの襲撃を免れたゼンマイは順調に成長を
続け、一度襲われたゼンマイは二度にわたって襲 撃を受けるということです。この不運なゼンマイと容赦ない
ゼンマイハバチの関係は、最大で2億年以上続いている可能性があります。
2011.05.01
クリメコブズイフシとマンジュウホコリ
平成23年5月1日 日曜日
今年も栗畑のクリの木の若葉に赤いふくらみが目立つ季節となりました。一見したところ、植物の組織の一部
のように見えますが、このふくらみはクリタマバチ の虫こぶ(幼虫の部屋)で、この部屋自体はクリメコブズイフシと呼ばれます。クリタマバチは1940年頃に中国から日本に入ってきた栗の害虫です。
虫こぶ のできる仕組みについてはまだよくわからないことも多いのですが、若葉が育つ力をうまく利用して
虫こぶがふくらんでいく様子を見ていると自然界の神秘を感 じます。
一見しただけでは何かよくわからないものをもう一つ見つけました。変形菌のマンジュウホコリで す。中身は、最初はカスタードクリームのようなペースト状ですが、やがて黒くなってこしあんのようになります。
以前に不二聖心の森の中でマンジュウホコリ を割ってみたことがありますが、白い皮から黒いあんこのようなものが出てきたときには、まさに「マンジュウ」だと思いました。
2011.04.30
キジとニガイチゴ
平成23年4月30日 土曜日
不二聖心では、ゆっくりと移動しながら餌を探すキジの姿をよく目にしますが、意外に敏感で人が近づくと
すぐに逃げてしまうためになかなか写真に撮ることが できません。しかし、今日は珍しく悠然と石の上に
たたずむ姿をカメラに収めることができました。「ケーン、ケーン」と擬音語で表現されることの多い
鳴き声も何度も耳にし、新緑の森に響き渡る力強い声を味わうことができました。
キジがよく歩いている道の脇には、ニガイチゴの花が咲いていました。昨年はほとんど花をつけ ず、
どうしたのかと心配しましたが、今年はたくんの白い花が咲きました。写真を撮っている間に、
コマルハナバチやセダカコガラシアブが近くを飛び回り、一 匹の小さなアリが花の中に入っていきました。
さまざまな昆虫がニガイチゴの受粉を助け、やがてこの木はたくさんの赤い実をつけることになります。
2011.04.29
父の日参観日とニョイスミレ
平成23年4月29日 金曜日
今日は「父の日参観日」で、シスター山下まち子による「聖心女子学院のルーツを探る」という講演が
ありました。シスターは、創立者の心の中には「創造主で ある神をたたえる若者を世界の果てに至るまで
育てていきたい」という思いがあったことを確認なさった上で、さまざまな資料と貴重な写真を通して
聖心女子学 院の教育の根本を丁寧にお話してくださいました。シスターのお話をうかがった私たちは、
「子どもたちの教育を通して世の中に神の聖心を花開かせていきた い」という思いを新たにしました。
早春の頃から不二聖心を彩ったタチツボスミレもようやく盛りを過ぎ、春はもうすぐ終わりを迎えようとして
います。スミレ色という言葉があることからもわかるようにスミレというと私たちは自然に紫色を思い浮かべ
ます。しかし、スミレは紫色のものばかりではありません。不二聖心の野には、今ごろから白いスミレが数多く
咲き始めます。こちらもタチツボスミレなどに負けず劣らず、可憐で美しいスミレで、
名前をニョイスミレと言います。
2011.04.28
東日本大震災の募金活動とホウセンカヒゲナガアブラムシ
平成23年4月28日 木曜日
温情の会委員会が中心となって行っている東日本大震災の募金活動が今日で4日目を迎えました。
仲間の協力でずっしりと重くなった募金箱を抱えて喜ぶ 温情委員の姿が教室では見られています。
募金とともに節電の呼びかけも温情の会委員会から積極的になされ、生徒の意識も高まってきました。
裏の駐車場から校舎までの道に生えているサルトリイバラの木にホウセンカヒゲナガアブラムシがついている
のを見つけました。アブラムシには寄主特異性(特定の植物につく性質)があり、このアブラムシは
山地に自生するサルトリイバラに多く寄生すると 言われています。もうすぐここにはアブラムシの天敵である
テントウムシがやってくることでしょう。アブラムシは対抗するすべを持っていませんが、代わりにアリが天敵を退けてくれます。アリは褒美としてアブラムシから甘い蜜をもらいますが、糖分が十分に足りていて
タンパク質が不足している時にはアリはアブラ ムシを食べてしまいます。
「食う食われる」の関係の微妙なバランスによりアブラムシの数は一定に保たれ、サルトリイバラの木は枯れることなく生き続けます。やがて、瑠璃色の模様が 美しいルリタテハがサルトリイバラの葉に卵を産みに
やってくることでしょう。ササグモが子育ての場としてサルトリイバラの葉を利用するかもしれません。
アブラムシをじっと見つめるだけで生態系のイメージは無限に広がっていきます。
2011.04.27
卒業生の講演とジロボウエンゴサク
平成23年4月27日 水曜日
昨日、高校3年生の総合学習の時間に、第47回生の市村梓さんと小杉祐美子さんの講演がありました。
市村さんは慶応大学卒業後、東京大学の大学院で 学び、現在は外資系金融機関にお勤めです。
小杉さんは聖心女子大学卒業後、広告代理店でご活躍です。不二聖心での6年間の生活を生かして卒業後も
多くのこ とを学び、世界のために何かの役に立ちたいと思いながら生きていらっしゃるお二人の姿に生徒たちは深い感銘を受け、強い刺激と大きな勇気を与えられ、目を 輝かせて聞いていました。
2週間ほど前から職員用の出入り口の近くに群生するジロボウエンゴサクが花を咲かせています。
多くの県で絶滅が危惧され、すでに長野県では絶滅した と言われるジロボウエンゴサクがまるで雑草のように
校舎のすぐ近くに群生している不二聖心の自然環境は、まさに「二つとない」環境だと思います。
2011.04.26
カタクリハムシ
平成23年4月26日 火曜日
4月24日に校内で見つけたハムシについて専門家に同定を依頼したところ、
カタクリの葉につくカタクリハムシであることが昨日わかりました。
カタクリはたくさんの県で絶滅危惧種となっていますが、カタクリが絶滅したらカタクリハムシも生存を続ける
ことは難しくなるわけです。一つの命を救うことが、その命と深く関わる別の命をも助けることにつながる
ことを忘れたくないものです。
2011.04.25
高校3年生の短歌とカヤラン
平成23年4月25日 月曜日
高校3年生が詠んだ歌を紹介します。
あたたかい春の日の昼ねむ気くる私も小道の猫になりたい
背中押す朝六時の風さわやかで春感じつつ駅へと急ぐ
ひらひらと舞い散る桜来年へ花びら追いつつ涙ごまかす
満開の桜を見つめて心に誓う来年咲かそう私の桜も
今日の授業で生徒が読んだ震災の歌も載せておきまょう。
震災でガラスの割れた写真立て素通しとなり妻がほほゑむ 仙台市 岩間啓二
被曝検査受けねば避難受けつけぬと雨を濡れきし親子帰さる 福島市 中村晋
地震起きし時刻を指して止まりたる校舎の時計背に給水を待つ 仙台市 鹿野道子
生徒の歌に詠まれた桜はソメイヨシノだと思いますが、先週から八重桜も咲き始めました。
授業に行ったら教卓に八重桜の花が置いてあり、その日は一日それで心が和みました。
校内の桜の木についたカヤランがついに花を咲かせました。1年前に、校内のカヤランの数の減少 を嘆いた
教頭の田中正延先生が移植したカヤランです。全国的に絶滅が心配されているカヤランの移植に成功したのは
すばらしいことだと思います。田中先生は 湿度を含む周辺の環境にまで配慮して移植場所を選んだそうです。
自然を見つめるまなざしの深さが生んだ快挙です。
2011.04.22
聖週間と竹の子
平成23年4月22日 金曜日
今日は聖金曜日です。聖週間に入って校長室前の掲示の内容も変わり、今はキリストの受難の物語に関係する
絵などが飾られています。絵の下にあった祈りのことばに心を打たれました。次のような祈りです。
今このとき、イエスの受難と苦しみの道をともに歩みます。
祈りを最も必要としている人びとに主の光と慰めが与えられますように。
復活祭を迎えると季節が一つ進むような感覚にとらわれます。不二聖心でも聖週間に合わせるかのように
竹の子が採られ始めました。
下の写真は本館の受付に飾られている竹の子です。たてかけある葉書と比較すると竹の子がいかに大きい
かわかります。
2011.04.21
新年度祈りのつどいとクサボケ
平成23年4月21日 木曜日
今日は「新年度祈りのつどい」がありました。宮内毅神父様は、お話の中で、「愛する相手のすべてを見る、
相手のいいところも悪いところも目をつぶることな く見ていくことが愛である。これは自分についても言える
ことで、自分のいいところも悪いところもしっかり見つめていくことが自分を大切にすることであり、
その姿勢は学校目標の『謙虚に自己を培う』にも通じる。」とおっしゃいました。この言葉を一年間、
心にとめて生活したいものです。
下の写真は各クラスの幹事が、クラス目標についての祈りの紙とパンを祭壇に捧げている場面です。
今、牧草地の横の道では、クサボケの花が咲いています。この花を見ると夏目漱石を思い出しま す。
漱石は「木瓜(ぼけ)咲くや漱石拙を守るべく」と詠みました。この句からは漱石の、「拙」すなわち「愚かさ」を受け入れて生きていこうとする心が伝 わってきます。漱石も生涯、「謙虚に自己を培う」ことを続けた人ではないでしょうか。
クサボケは、13の県で絶滅危惧種に指定されています。